Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.054 大里真理子さん

2017/03/26 (日)
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大里真理子さん

株式会社アークコミュニケーションズ
代表取締役

翻訳、Web企画制作、人材派遣などのグローバルコミュニケーションサービスを手掛ける株式会社アークコミュニケーションズを創業した大里さん。経営者と1児の母という2役をこなしながら、留学生の支援活動や日本パブリックリレーションズ協会理事、日本オリエンテーリング協会理事、各種同窓会の幹事、PTA活動など、公私を含めて多方面で活躍されています。今回はご自身のキャリアについてお話しいただきました。

中国でのビジネスで億単位の損失を出す

私は、東京大学文学部英文学科を卒業後、日本IBMにSEとして入社しました。まさに、男女雇用機会均等法の第一世代として働き始めたのです。入社して4年が過ぎた頃、今までと同じやり方では10年経ってもこれ以上の伸びはないと感じていました。また、私はエンジニアとして狭く深く突き詰めるより、広く新しいことをやりたい性格で、「いつかは会社経営をしたい」との思いもありました。そこで経営を学ぶために、会社を休職してノースウェスタン大学経営大学院ケロッグビジネススクールへ自費留学することを決めました。

ケロッグでは、トップ10%に授与されるAwardを取得したこともあり、修了後に多くの仕事のオファーをいただきました。でも、内心では少し焦っていたんです。私がケロッグに留学している2年の間に、以前の会社の同期はすでに仕事で実績を上げている。「早く仕事で成果を出さなくては」と感じていました。なるべく早く経営層に入れるような職に就きたい。しかも、モノづくりやどろくさい実務にこだわりたい。そんな思いもあり、課長として受け入れてくれるユニデン株式会社に入社することにしました。

入社後、中国の携帯電話市場への新規参入プロジェクトを担当することになり、中国に駐在することになりました。1年目は「こんなに売れるなんておかしい」と思えるくらい爆発的に売れたんです。そのおかげで社内では「女性初の取締役誕生か?」とまで言われました。でも、2年目から状況が一変。売れたはずの製品が次々と返品されてきました。実は、大量に買っていたのは販売代理店で、一般消費者が買っていたわけではなかったのです。製品は中国仕様なので他国で売ることもできない。大量の不良在庫を抱え、億単位の赤字を出してしまいました。事業を撤退して失意のまま帰国。降格、降給という大きな挫折を味わいました。

生まれて初めての逆境です。不評を跳ね返そうと新しい企画を提案したりもしましたが、億単位の損失を出した人の話を聞く人なんていない。起こす行動がすべて裏目に出て、空回りを始める。「こういうときは何もしないで、流れに身を任せた方がいい。今、流れに逆らってもいいことはない」との先輩の助言に従い、何もしないことに集中。すると、少しずつ周囲が見え、今まで気づかなかったことが分かるようになってきました。このとき、「立ち止まって考えることも時には必要」と学んだのです。その後、インターネットプロバイダー事業の立ち上げをきっかけに、自分として区切りをつけて退職し、次のステップに進むことを決めました。

Communicate Locally, Market Globally

34歳のとき、ユニデン時代の上司と株式会社アイディーエスを設立しました。執行取締役として、翻訳、Web、SIという3つの事業を立ち上げました。ここで学んだことは、「リスクはTakeするものではなくManageするもの」ということ。ベンチャーというと、「リスクを恐れず」と考えがちですが、これは間違い。ベンチャーは大企業と違い体力がないから、リスクをとってはダメ。リスクをとると本来の業務に専念できなくなる。なので、初めての客からは半金をもらう。新事業のために助成金に応募し、資金に余裕をもたせる。人材は売上の見通しがついて初めて雇う。そんな会社経営の基礎を学びました

起業して数年が経ったとき、「そろそろ新しいことをやりたい」と思うようになりました。また、システムと翻訳では事業のスタイルが違うので、一つの会社でタイプの異なる事業を運営することの難しさも感じていました。そこで42歳のとき、アイディーエスから翻訳とWeb制作事業の営業譲渡を受け、株式会社アークコミュニケーションズを設立し、代表取締役となりました。また、その年、語学とWebに特化した人材派遣事業を新たに立ち上げました。

当社では、「お客様の思いや本質をカタチにして世界に伝える」とのミッションのもと、「Communicate Locally, Market Globally(広がるビジネス、深めるコミュニケーション)」をコーポレートスローガンに掲げています。私たちが目指ざすものは、企業と人とを繋ぐグローバルなビジネスコミュニケーション。今やビジネスは、言葉や時間、距離の壁を越え、無限にチャンスを広げる時代です。それに対応するには、バックグラウンドが異なる様々な国の人と、日本人としてのアイデンティティを考えながらコミュニケーションをとる必要があります。一方で、日本国内においてもステークホルダーが複雑化・多様化し、適切なメッセージを発信するだけでなく双方向でやりとりする必要が出ています。ローカルとグローバルの両者を考慮に入れながら、ワンソースマルチユースなビジネスコミュニケーションサービスを提供したいと思っています。

経営者として大事にしていることは三つあります。一つは利益を出すこと。利益を出すということは循環の仕組みをつくることです。そして利益を出すことで初めて他の人を幸せにできる。これは中国で事業に失敗したときに学びました。武漢支店長として現地の人を採用しましたが、撤退するときに全員を解雇。このとき「会社は利益を出さなければダメだ」と痛感しました。二つ目はコミットメントすること。経営者の行動は周りに伝わるので、まずは自分が覚悟を決めて取り組むことが大事だと思っています。三つ目は自分の良心や美学に反することはしないことです。

自立・多様性・共生を大切にする世の中へ

当社では、持続可能な循環型社会の実現を目指して、未来ある人々のグローバルな活躍を支援するCSR(企業の社会的責任)活動を行っています。その一つが留学生の支援です。これは自分自身が留学で得た経験を次の世代へ伝えていきたいとの思いから始めました。あるとき、日本の大学で留学生を対象に、英語による授業のみで学士号や修士号が取れるプログラムがスタートしていることを知りました。でも知名度が低い。そこで、そのプログラムを無料で海外留学生にPRするWebサイトを立ち上げました。外国人留学生に日本への留学機会を提供し、また留学する機会のない日本人学生にも、このプログラムによってグローバル化や多様性を享受できる環境をつくる一助になることを目指しています。

もう一つがアスリート支援です。私は30代でスキーオリエンテーリングの競技を始めました。そこで世界に通用するトップアスリートが、金銭的な問題で競技生活を断念する状況を間近に見てきました。世界で戦い続けるために資金は欠かせません。しかし、国内での露出が少ないマイナー競技のアスリートたちは、実績があっても大企業のスポンサーがつかないのが現状です。当社では、アークコミュニケーションズスキーチームを立ち上げ、選手のサポートをスタート。さらに中小企業や地域社会、個人などが協同することで新たな支援の担い手となり、トップアスリートだけでなく競技そのものも永続的に発展していけるモデルづくりにも貢献したいと考えています。

50代に入ってからはスキーチームの課題解決のため、早稲田大学スポーツ科学研究科に入学し、解決手法などを学びました。さらにそこで得たことを社会還元するため、日本オリエンテーリング協会理事となりました。次に、東京大学に女子ア式蹴球部ができたことをきっかけに、関東大学女子サッカー連盟の理事も引き受けました。さらに、ママ友ネットワ-クが欲しかったことや次世代に貢献したかったこともあり、PTA活動にも参加。その頃には、もともと広報ノウハウを学ぶ目的で入会した日本パブリックリレーションズ協会の理事にもなっていました。それ以外にも東大の女子卒業生の同窓会「さつき会」やケロッグの日本同窓会の幹事も務めたりして、現在でも活動の幅を広げています。

私は、自立・多様性・共生という三つの価値観を大切にしています。個々が自立していくことを前提に、多様性を認め、お互いに共生していく世の中が望ましいと考えています。まずは当社がサバイブし、成長していくため、採用や新しい事業を積極的に展開していく必要があると考えています。その上で、海外や次世代とのつながりを持ちつつ、留学生やマイナースポーツの支援をすることで共生を図る。自立・多様性・共生。この三つを大事にした生き方をこれからも続けていきたいと考えています。

プロフィール

株式会社アークコミュニケーションズ代表取締役 大里 真理子 東京大学文学部卒。Kellogg School of Management卒業(MBA)。IBM、ユニデンを経て(株)アイディーエス設立に参画。5年にわたる米国、ドイツ、中国での経験を活かし「Communicate Locally, Market Globally」をコンセプトに、ビジネスコミュニケーションをサポートするアークコミュニケーションズを2005年に設立、現在代表を務める。2013年早稲田大学スポーツ科学研究科修士課程修了。ダイヤモンド社『シナジー・マーケティング』、『企業ブログ戦略』など翻訳多数。(公社)日本PR協会理事、(公社)日本オリエンテーリング協会理事など。

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