Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.049 村山忠昭さん

2016/11/11 (金)
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村山忠昭さん

株式会社マルチブック
代表取締役

日本企業の海外進出を支援するシステム・コンサルティングやクラウド型の業務支援ソフトの開発・販売を行う株式会社マルチブックを創業した村山さん。これまでにドイツ、オランダ、タイ、フィリピンなど海外7ヶ国の拠点をベースに、20ヶ国以上の海外進出プロジェクトを手掛けるなどビジネスをグローバルに展開しています。今回は、ご自身のキャリアや今後の展開についてお話しいただきました。

一人でシステム・コンサルティング会社を起業

私は大学卒業後、ユニリーバに入社、最初は経理の仕事に就きました。入社3年目の時、コンサルティング会社と一緒にドイツSAP社製ソフトを自社の経理システムとして導入するプロジェクトに携わりました。そのとき、「システム導入をサポートする会社であれば多くの会社の経営を勉強することができる」と気づきました。そして、2年間社内で保守と経理を掛け持ちしながらシステムの勉強をして、「自分には経理とSAPの知識があるので、経理システムのコンサルができる」そう思い、IBMに転職しました。

システムの業界で働き始めると、フリーランスの人が多くいて、「システム会社って割と簡単につくれるんだ」と気づきました。私は中学生の頃から株式市場や会社経営に興味を持ち、「自分でビジネスをやりたい」と考えていたのです。経営者の書いた本を読むのが好きで、「西武よりイトーヨーカドーの方がこれからは伸びる」と上から目線で、西武もイトーヨーカドーもない山口県の田舎で友達と話をしていました。だから自分で会社をつくることに興味はありました。でも、どのビジネスをしたらいいかわからない。そんなとき、SAPの知識があるフリーランサーの人が神様と呼ばれている姿を見て、「あの人が神様と呼ばれるなら、自分でも仏様くらいはできるはず。起業しよう」と決意しました。

そこで、一人で有限会社ティーディー・アンド・カンパニー(現・株式会社マルチブック)を立ち上げました。ちなみに社名は、私の名の「忠昭(ただあき)」からつけました。フィリップモリスに勤めていた時、アメリカ人の同僚から「名前が読みにくい」と言われていました。ただ「TedやTadはもう古いので、2文字のTDがいい」そう言われてつけました。

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当初は、海外企業の日本進出を支援するシステム・コンサルティングから開始。それを5年続けました。でも、社員が3名しかいなくて個人事業主とあまり変わらない。「広がりが無くて、つまらない」と感じていました。そこで、逆の発想で「外→内」でなく、「内→外」、つまり、日本企業の海外進出を支援するビジネスを始めようと考え、米国の展示会に行きました。ブースを出して「日本進出の支援をしています。日本に来ませんか?」と勧誘しましたが、残念ながら一社も来ませんでした。

ヒマだったので、米国企業のブースを周り、「SAPの周辺ソフトを日本で売らせて欲しい」と提案。すると、数社と代理店契約を結ぶことができ、日本で販売を開始しました。すると、ある企業から、「周辺ソフトの話をちょっと聞かせてほしい」との話が来ました。お客様を訪問すると、輸入しているソフトだけでなく、SAPの海外展開で困っているという話になり、ドイツは支社なので規模はそれほど大きくない。でも、大手システム会社に話すとプロジェクト費用だけで数億円かかるとのこと。そこで、「当社なら2人だけで充分やれます」と提案し、契約が成立。その後、その会社からドイツだけでなく、ベルギーやドバイ、タイ支社向けのシステム導入をサポートして欲しいと次々と言われ、今では最も重要なお客様です。

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全社員が日英バイリンガル

一人で会社を始めましたが、現在は社員40名ほどになりました。システム・コンサルティングの仕事は、フリーランスでもできるので、必ずしも会社に属する必要はありません。ただ、当社の場合、日本企業の海外進出をする仕事がメインのため、海外との関わりを必ず持てます。そのため、海外での仕事や英語を使った仕事に興味のある人が徐々に集まってきました。国籍も多様で、日本、フィリピン、フランス、スペイン、デンマーク、ベルギー、アメリカ、タイ、ベトナム、インド、韓国の11ヶ国にまたがります。構成は、日本人7割、外国籍3割。仕事の性質上、社員には日本語と英語ができること、つまりバイリンガル以上であることを必須としています。一方、お客様先では日本語と英語以外の言語の使用を禁止しています。お客様がわからない言葉で、内緒の話をしていると思われてはならないためです。

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ただ、これだけ国やバックグラウンドに多様性があると、評価が難しくなります。ただ、出来る限り平等であろうと心掛けています。国によっては自己アピールが強烈なところもありますし、逆に謙遜して控え目にするのが美徳のお国柄のところもあります。平等であるためには、あまり声を出さない人の声を拾うように努めています。声が大きい人は、こちらが黙っていても、いろいろと言うので、見逃すことがないからです。

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また、文化や商習慣の違いには悩まされます。ドイツのお客様では、金曜は午前中で仕事を終えるのが一般的な会社がありました。最初はわからず一週間のワークショップで日本から出張していて、「金曜の午後にワークショップのまとめをしよう」と言うと、ものすごく機嫌が悪くなったことがありまして、それ以来、まとめは金曜の午前中に行い、午後はフリーとしました。ベルギーでは、「新しいシステムがとても不安だから、テストに1ヶ月かけてほしい」と言われ、「そんなにかかるのかな?」と思っていたら、その内の3週間は「休暇」で、テストは実質1週間だった、ということもありました。

日本企業が海外で苦戦する理由の一つは、コミュニケーション不足にあります。日本人同士なら、「このレベルで出てくるだろう」と半ば当然と思うことが、海外では全然当たり前でない。それでトラブルになる。なので、コミュニケーションは密にとるようにしています。当社は、今、プログラム開発の拠点をフィリピンに置いています。今はスカイプもあり、以前よりコミュニケーションはとりやすくなっていますが、多少コストがかかってでも直接会う機会を設けています。やはり、膝を付け合せて話す経験があった方が、お互い信頼関係もでき、その後の仕事がスムーズに行くことが多いからです。

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日本企業1万社の海外進出をサポートしたい

子供の頃から釣りが好きで、ブラックバス釣りのプロになるのが夢でした。大学受験の際、関東で釣り部があるところを探したら、国立大学では横浜国立大学しか見当たらなかったので、そこに行くことにしたほど。最近はあまりしていませんが、釣り業界に還元したいとの思いから、ブラックバス釣りのプロリーグに出ている若い方を実業団釣り部として迎え入れました。その方は、シーズン中は釣りに専念してもらっています。彼は、現在、日本ランキング10位(約6000人中)で、釣り具メーカーのスポンサーもつくようになりました。これをきっかけに日本の釣り具メーカーの海外進出案件が獲得できる日が来ればと思っています。

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当社は、創業から大企業が海外に出る際のシステム導入を支援してきました。ただ、海外進出先が以前の米国や中国から次第に東南アジア、中東、アフリカなどに移ってきた。国の数が多くなる一方、クライアントの事業規模は小さくなってきた。すると、大規模向けソフトだとコストが高くつく。もっと中小規模向けの安価なソフトが欲しいとの要望が出てきました。そこで、いろいろ探しましたが、適当なものが見つからない。「ないなら、自分たちでつくろう」と自社でソフトを開発することにしました。

そこで昨年から、クラウド型の基幹業務システム「マルチブック」の販売を始めました。これはクラウド専用で開発したソフトを複数の会社が共同で利用するため、一社あたりの価格は安くすることができ、ネットさえあれば海外のどの国でも利用できるというものです。例えば、ある飲食業のお客様では、このサービスを利用することで、海外の店舗別や料理別の損益情報を日本でリアルタイムに見て分析することができます。サービス開始から、まだ1年ほどですが、タイやシンガポールを中心に既に数社にご利用いただいています。

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当面は、創業事業である「システム・コンサルティング」と「マルチブッククラウド」の2本柱で事業を進めていく予定です。日本は、高齢化が進み、どこか閉塞感がある。そのため、日本企業はアジアをはじめ海外に進出しなければならない日が来ていると思っています。日本には良いサービス、良い技術があり、海外に持っていく余地は十分にあります。現在、海外に進出している日本企業は3万社と言われています。当社は、まだ数十社しか関われていませんが、将来的には1万社の海外進出のお手伝いをしたい。そして、現地の生活レベルの向上にも貢献したいと考えています。海外から帰ってきて、「やっぱり日本が一番」と言わなくても良くなる世界になってほしいです。

私は、1年間の内、半分は出張のため海外で過ごしています。でも、実は海外に住んだことがないのです。出張で何ヶ月もいたことはありますが、腰を落ち着けて暮らしたことがないのです。なので、いつかは海外で暮らしてみたいと思っています。国としては、自然と都会のバランスがうまくとれているオーストラリアが好きです。あとは、タイにフィリピンも楽しいだろうなと思っています。いつか家族で海外生活ができることを夢見て、今は海外を飛び回っています。

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プロフィール

1968年山口県宇部市生まれ。横浜国立大学経済学部を卒業後、91年ユニリーバ・ジャパン入社。日本初のSAP導入プロジェクトに参画した後、外資系コンサルティング企業、外資系消費財メーカーを経て、2000年10月にグローバル企業向けのシステムコンサルティングを専門とする株式会社マルチブック(旧社名:株式会社ティーディー・アンド・カンパニー)を立ち上げる。2015年より自社開発によるクラウド型基幹業務システム「multibook」のサービスを開始。フィリピンのオフショアセンターを中心に、香港、タイ、シンガポール、オランダ、ドイツ、スイスの海外7拠点に展開している。

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