Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.025 鬼頭政人さん

2016/01/20 (水)
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鬼頭政人さん

株式会社サイトビジット
代表取締役 弁護士

司法試験や公務員試験などの資格試験対策の授業動画をインターネットで低価格で提供する「資格スクエア」を運営する株式会社サイトビジットを創業された鬼頭さん。「開成→東大法学部→弁護士→投資ファンド→起業」という異色のキャリアを歩まれながら、資格試験対策の業界を変えるべく、新しいビジネスモデルを構築し、着実に事業を拡大させています。今回は、ご自身のキャリアや起業の経緯、お仕事をする上で大切にされていることなどについてお話しいただきました。

自分を信じることの大切さを知ったボート部時代

私は、大学では法学部に入りましたが、実際はボート部に入ったかのように、勉強そっちのけでボートに打ち込む日々を過ごしました。年間300日は戸田にある合宿所に他の部員と寝泊まりして練習する。その練習が本当にきつくて、100回以上やめたいと思ったほどです(笑)。でも、4年の夏まで打ち込んだお蔭で、体力や粘り強さが 
身につきました。このときの経験は今でも活きていて、私の原点になっています。

ボート部を選んだのは、部の先輩方が人生を真剣に楽しんでいる姿を見て、「あの先輩達のようになりたい」と思ったから。楽しむというと、飲み会とかでみんなで盛り上がる楽しみ方もあります。でも、私は真剣な方に、より楽しみを感じます。それに、「人生で一回くらいスポーツに打ち込んでみるのもいいかな」とも思い、敢えて体育会の道を選びました。

ボートは同じタイミングで漕がないと、タイムロスをして負けるスポーツです。それに後ろを向いて漕ぐので、ゴールが見えない。見えない目標に向かって、みんなで一体となって取り組む。そこには足の引っ張り合いなんて存在しません。チーム一丸となって目標を達成したときにみんなで喜びを分かち合う。これは、自分一人では味わえない快感があります。

また、ボート部時代に自分を信じることをブラさない大切さを学びました。部ではクルーキャプテンという役職を務めていて、「インカレで勝つ」という目標に向けて練習を重ねていました。でも、途中で自信がなくなり、自分の考えがブレてしまった。例えば、他校でやっている練習がよく見え、それを取り入れようか迷ってしまうことがあった。結局、一貫性を欠いたことで試合に負けてしまいました。自分たちで必死に考え抜いた結論であれば、やるべきことを信じることができ、それに集中できたはず。でも、実際はできなかった。悔しい思いをしましたが、自分を信じることが勝つためには必要との教訓を得ました。

ボート

弁護士事務所から投資ファンドへ

就活のとき、法学部に入ったのに、部活に没頭したことで法律のことがよくわからない状況でした。「もう少し法律を勉強しよう」と、ロースクールに入り、弁護士を目指すことにしました。無事に試験に通り、法律事務所に入って社会人生活をスタートさせます。その後は、裁判所に週3〜4回通う日々を過ごしました。ただ、中小企業やベンチャー企業のクライアントと仕事をしていく内に、「法律だけでなく、トータルにアドバイスできるようになりたい」との思いが強くなりました。

そんなとき、友人から産業革新機構という国の立ち上げた投資ファンドに誘われました。ビジネスを多角的に学ぶ良い機会と思い、転職することにしました。ここでは、M&Aやベンチャー企業への投資案件を担当しましたが、全くのゼロからのスタートだったので、入社してからはわからないことだらけ。自分の無力さを痛いほど感じました。それまではワードしか使ったことがなく、エクセルやパワーポイントも使えない。会計やファイナンスの知識もない。「何もできない自分」に劣等感を覚えながらも、必死に学んで食らいついていきました。

弁護士時代は完全に個人プレーで、先輩たちに聞いても「自分で調べろ!」と言われるだけ。あとは誤字脱字のチェックなど正確性が求められました。でも、投資ファンドでは、スピードが命。クイック&ダーティーで、6〜7割を自分でさっとやり、あとは人に聞いたりしながら10割まで持っていく。そういう仕事スタイルでないと、とても案件をこなせない。文章などの正確性よりも本質を重視する姿勢を身に付けることができました。

バッジ

当初は知識やスキルがなく、勉強しながら大量に仕事をしていたので、週10時間しか寝ないという日が続きました。上司も厳しく、罵倒されることも何度もありました。でも、「ここでやめたら負け犬。やめるなら、みんなから惜しまれてやめよう」と周りの助けを借りながら必死についていきました。ただ、短期間に集中的に取り組んだことで、半年くらいで「この世界で何とかいけるかな?」と思えるレベルにもっていくことができました。つらい日々でしたが、今から思うとこのような経験をさせてもらえたことに感謝しています。

ファンド時代は、チームで仕事を進める上で情報共有が大切なことを学びました。通常、情報は上に集中して、下にはなかなか降りてこないもの。上には大量に情報が集まるので、すべての情報を把握できず、抜けが出る。下もその情報を知っていると思って指示を出したりする。でも、下は知らないので齟齬が生じる。すると、プロジェクトの進行が遅くなったり、方向がズレたりする。それを避けるには、上になったら情報を共有する。下にいるときは情報を頻繁に報告する。このことを意識することを心がけました。

鬼頭さん2

いつでもどこでも低価格で人気講師の講座を受けられる「資格スクエア」を立ち上げる

産業革新機構では、1年目は大企業が対象でしたが、2年目からベンチャー企業への投資を担当するようになりました。自分と同年代だったり、年下のベンチャー企業の社長たちと仕事をしていく内に、経営者の魅力を感じるようになり、「起業は面白そう。それに自分も成長できそう」と思うようになりました。また、それと同時に「こいつらには負けたくない」という生来の負けじ魂もメラメラと燃えてきました。そこで、起業プランを考え始めました。

ビジネスモデルを考える上で、考慮した項目は三つ。一つは、社会価値。つまり、人のためになるビジネスであること。二つ目は、市場ニーズ。市場のトレンドに合っていること。三つ目は、自分の得意分野。勝てる領域で勝負すること。この条件で考えていたとき、資格試験の市場に注目しました。もともと勉強が得意で司法試験の受験経験もある。その一方で、業界は非常に旧態依然としていて、改善の余地があると感じました。

以前から、「資格試験の予備校の授業料は何十万円、何百万円もしていて高い。もっと安ければ行くのに」と思っていました。供給者である予備校と消費者の感覚との間に大きなギャップがある。このギャップを埋めるサービスをつくれば、社会的に意義があるはず。人の役に立つこともできるはず。「ここに自分の人生を賭けてみよう」と思いました。

鬼頭さん1

そこで、株式会社サイトビジットを立ち上げ、司法試験や公務員試験などの資格試験の授業動画をインターネットで提供する「資格スクエア」というサービスを2013年11月から開始しました。資格スクエアでは、スマホやタブレット等のオンラインで人気講師の授業を、いつでもどこでも、しかも低価格で受けることができます。現在、一番安い講座は月額1,000円ですが、平均で月額4~5,000円程度と、他に比べて格段に低い水準です。

サービスを開始してから、主に仕事が忙しく、勉強時間があまりとれない30代~40代の社会人の方を中心にご利用いただいています。パソコンだけでなく、スマホやタブレットを用いて仕事の後、電車の中で受講されている方もいらっしゃいます。現在は、司法試験、司法書士、弁理士、社労士、中小企業診断士など20講座を開講していますが、今後はもっと講座数を増やしていきたいですし、企業向けや海外にも展開していきたいと考えています。

資格スクエア

自己成長を続けることが会社の成長につながる

「企業の器=社長の器」だと考えています。社長である自分の器が小さいと、企業はそれ以上に大きくならないので、常に自分が成長できるように心掛けています。数字もそうだし、掲げるビジョンもそう。なるべく大きく考えるようにしています。「メジャーリーガーになる!」と思わない限り、なれないもの。だから、常に目標を高くするように努めています。

経営資源の中では、ヒト、モノ、カネよりも情報が大事だと思っています。情報交換のため、月に100人くらいは、これまでにお会いしたことがない人と会うようにしています。いろいろな人と会うと、新たな刺激や貴重な情報をもらえたりします。また、新たに別の人を紹介してもらうこともあり、そこから思わぬ出会いがあったりもします。そんなセレンディピティーも楽しみながら、人とは積極的に会うようにしています。

あと、人と会うときは、量だけでなく、質も重視しています。レベル感の違う人と会い、お話をすると、「こんなビジネスプランではダメ!」と厳しい言葉をもらうこともありますが、自分の目線が一段上がります。ある経営者の方とお会いしたとき、「日本の産業を変える!」という心意気で仕事に取り組まれている姿勢に触れ、「自分もそれくらい大きなビジネスをやりたい」と刺激を受けました。直接お会いすると、その人から出るオーラを感じることができ、言葉がすっと自分の中に入ってくる。本などでは味わえない、ライブならではの感覚だと思います。

結果よりもプロセスを楽しみたいと思っています。私の場合、幸せとは「自己成長」で、今は自己成長と会社の成長はほぼ同じです。うまくいかないことがあっても、アレコレ考えて乗り越えていくのが好きなんです。今はうまくいかないことばかりで、毎日格闘していますが…。それでも、考えることが好きなので、あまり苦ではありません。それに悩むことも好きです。悩むということは選択肢があるということでもあり、むしろ良いことだと思っています。「この問題をどう解決していくか?」ということに集中して、一種のトランス状態、ゾーンに入った状態のときに充実感を覚えます。そして、解決策を見出し、それがお客様や社会から受け入れられたときが、たまらなく嬉しいです。

鬼頭さん4

教育は、教える側と教えられる側の双方にとって、それを通じて人が育つ最適の場です。教育を受ける機会は、誰もが平等に与えられるべきであり、収入の多寡によって教育機会に格差が生じることは本来の教育が目指すものではないはずです。また、日本では各種の試験制度が発達していますが、試験に受かること自体がゴールとなりがちで、試験に受かることは単なるスタートに過ぎないという意識を醸成しにくい環境にあります。

私は、誰もが平等に教育を受ける機会を確保することで、そうした教育の現状に一石を投じ、試験に対する意識そのものを変えていきたい。特に、既存の業界では価格水準が極めて高く、多くの方が勉強を始めることすらままなりません。そんな資格試験業界は、まだまだ変革の余地が大きいと感じています。 「資格スクエア」では、オンラインによる講義動画などの配信を皮切りに、誰もが資格試験対策を平等に受けることのできる社会の実現を目指し、日々事業を推進し、日本の教育を変えていきたい。そのように考えています。

鬼頭さん5

資格スクエア https://www.shikaku-square.com/

株式会社サイトビジット http://sight-visit.com/

プロフィール

資格スクエア 株式会社サイトビジット代表。都内法律事務所、政府系投資ファンドを経て、2013年12月に資格スクエアを創業。リアルを超えるオンライン学習を目指し「資格スクエアクラウド」をリリース。勉強の効率化と継続性を両立させる全く新たな学習法を提案中。

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