Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.013 坂本健太郎さん

2015/10/30 (金)
このエントリーをはてなブックマークに追加

坂本健太郎さん

トレンドマイクロ株式会社
マーケティング本部
パートナーマーケティング部
チャネルマーケティング課
課長

トレンドマイクロで情報セキュリティ関連ソフトのマーケティングを担当されている坂本さん。これまで仕事でのセミナー等を200回以上も講演するなどプレゼンテーション経験が豊富です。その一方、「神楽坂まち飛びフェスタ」の副委員長も務められ、地元の伝統文化や工芸を広める活動にも積極的に取り組まれています。今回は、仕事で意識されていること、地域コミュニティ活動、将来の夢などについてお聞きしました。

技術とマーケティングをつなぐことを意識

私は大学を卒業してから、ずっとIT業界に身を置いています。これまでに何社か経験しましたが、現在はトレンドマイクロ社で情報セキュリティソフトの販路を拡大させるチャネルマーケティングを担当しています。会社は変わっても、仕事で意識してきたことは一貫しています。それは「技術とマーケティングをつなぐこと」です。

具体的には二つあります。一つは、技術に付加価値を付けて売れるものに仕立てること。素晴らしい技術でもサービスの要素が欠けていると全く売れません。自社だけでなくパートナーを巻き込んで「いかに技術の良さを活かして、顧客価値あるものにするか」を意識してきました。もう一つは、わかりにくい技術をわかりやすく伝えること。IT業界の用語は、とかくヨコ文字が多くわかりにくい。「いかにシンプルで、わかりやすくメッセージを伝えるか」も工夫してきました。

坂本②

このことは20代で出会った上司に叩き込まれました。それまでは「技術的に良いものをつくろう」との思いが強かった。それが、その上司から「その技術って本当にお客さんのためになるの?商売になるの?」と言われ続けました。また、新しい技術ばかり追い求めていると「既に会社には良い技術が一杯あるはず。それらをもっと使えないの?」とも言われました。それ以来、技術一辺倒ではダメで、いかに技術にマーケティングの要素を盛り込むかを考えるようになりました。

そして、マーケティングのことを体系的に学ぶため早稲田MOT(技術経営大学院)に行きました。通常、ゼミは一つだけに入りますが、より広く学びたかったので二つ入りました。一つは寺本義也ゼミです。ここでは、まさに技術をビジネスサービスに落とし込む手法について研究しました。もう一つは木村達也ゼミです。こちらでは、顧客への価値提案について学びました。ちなみに、修論のテーマは「価値協創に基づくマーケティング戦略の構築と実践」です。

坂本③

落語を通じてセミナーで伝える技術を身に付ける

技術をわかりやすく伝えることについて言えば、これまでに200回以上セミナーで講演をしてきました。内容は、情報セキュリティや個人情報保護法に関すること、最近ではマイナンバー制度などについてです。話すようになったきっかけは、実は以前の職場でセミナーを引き受けた上司が突然退職し、その役が自分に回ってきたことです。最初は経験もありませんし、うまく話せませんでしたが、場数を踏むにつれ上達していきました。やっぱり数は大事です。

坂本④

あと、参考にしたのは落語です。落語では「枕」というつかみの部分、今でいうアイスブレイクのコツを学びました。例えば、落語で江戸時代の酔っぱらいの話をするとします。でも、当時のことはわからないので、まずは現在の酔っぱらいの話をする。すると頭にイメージができるので受け入れやすくなる。そういったことを学びました。枕はとても大事なので、使えそうなネタはなるべく仕入れるようにしています。

また、「即興落語」も参考になりました。これは決まったネタではなく、その場で内容を考えるものです。来ている人に合わせてネタを考え披露していきます。ここで大事なことは、聞いている人がどういう層かを的確に見極めること。例えば、白髪交じりの方が多いなと判断したら、少しくどくなっても説明の部分を多くしたりします。相手に応じて臨機応変に対応することを即興落語から学び、実際のセミナーでも実践しています。

落語の基本的な流れは「枕-本題-オチ」です。シンプルですが、プレゼンなどにも使える有効な話の進め方です。また、話す内容だけでなく、話し方の部分。例えば間の取り方なども落語はとっても参考になります。

坂本⑤

地域コミュニティ活動で人を巻き込む力を養う

5年前から「神楽坂まち飛びフェスタ実行委員会」に入り、現在は副委員長を務めています。この委員会は、神楽坂の伝統文化や工芸品を伝えることを目的に組織化され、毎年10月中旬から3週間に渡ってアートイベントを開いています。700メートルの坂にロール紙を敷き、そこに絵を描くイベントや芸者さんとのお座敷遊び入門などをしています。

神楽坂には昔から映画館や能楽堂などがあり伝統的な文化があります。ただ、20年ほど前、お客さんの数が少しずつ減っていった時期がありました。もう一度、神楽坂の文化を盛り上げようと、このイベントが始まりました。

私が参加するきっかけは、家族の個展を神楽坂のギャラリーで開いたとき「アートイベントに参加しませんか?」と誘われたことです。そしてボランティアでイベントに参加したとき「私はずっと神楽坂に住んでいるんです」と言ったら、「是非実行委員会に加わりませんか?」と声を掛けていただきました。アートのことはわからないけど、アートの技術を知らしめることやオペレーションには興味があったし、仕事で培ったマーケティングのスキルも活かせるかなと思い参加することにしました。

アートイベントの運営は思いのほか大変でした。会社と違って様々なバックグラウンドの人が関わっているので、どう調整するのか?どう巻き込むのか?ということには特に苦労しています。例えば、何かを頼むときにも、相談する順番や段取りには気を付けています。ただ、人を巻き込む力はここで大きく養われました。コツは、まず進んで先にやること。ボランティア団体ということで、おカネはなく、その代わりに労働力を提供することになりますが、まず自分達から先にやることが大事だと感じています。最近では、東京メトロや消防庁などとも協業してイベントを進めていますが、今後も多くの人や組織を巻き込みながら発展させていきたいと考えています。

坂本⑥

日本の伝統工芸・芸能を多くの方に伝えていきたい

以前、旅行に行ったとき、ディスカウント価格で売られている地元の伝統工芸品を見ました。それを見て「本当は安くしなくてもいいのに」「もしかしたら、その良さを伝え切れていないのかな?」「お客さんから見て、その良さがわからないのかな?」と思いました。伝統工芸品のことをよく知らないことにディスカウントの原因があると考えるようになりました。

そこで、これからは日本の伝統工芸・芸能の良さを少しでも多くの人に知ってもらえるような活動をしていきたいと考えています。それは国内だけでなく、海外にもしっかり伝えていきたいと思っています。

また、知ってもらうだけでなく、是非、リアルに見てもらいたいし、本物を知ってもらいたいとも思っています。今は便利になってテレビとか携帯端末とかで、いろいろなものを見ることができます。ただ、それだけでは本当の良さに触れることはできません。一方、リアルに見に行くと実体験を伴いますし、何よりそこで人と人との交わりができます。すると「あの工芸品がいいらしいですよ」「じゃあ私も見に行ってみようか」と人から人へと話がドンドン広がっていきます。

あと、生産地と消費地をつなぐ取り組みもしていきたいです。神楽坂は消費地でもありますが、それは地方の生産地があってはじめて成り立つものです。なので、消費地だけが上手くいっても限界があります。そこで、生産地とのタイアップもしていきたいと考えています。「作っているところが実際に見られる」「本物の食材を食べられる」そんな場を神楽坂で提供できたらと思っています。

そして、例えば、「鹿児島のこの食材を使った料理は、この店とこの店で食べられるよ」という情報を出して、それが携帯でもすぐに見れるような取り組みもしてみたいです。伝統工芸品という技術をITを使って面白く、わかりやすく伝えていく。このことをやっていくのは、「技術とマーケティングをつなぐ」ことを一貫して行ってきた私の使命かなと感じています。

坂本⑦

プロフィール

富士通ビジネスシステムでのSE、マイクロソフト、コンピュータ・アソシエイツ(現CA)でマーケティングを経験後、早稲田大学大学院国際経営学技術経営(MOT)に入学・修了。在学中、IT系メディアCNETで「IT業界マーケティング活用術」を執筆や、大手フラワーチェーン社内大学等でマーケティング講師を行った。現在はトレンドマイクロでチャネルマーケティング課の課長を務める。

このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップインタビュー

2017/05/10 (水) vol.056 北原照久さん

株式会社トーイズ 代表取締役

2017/04/20 (木) vol.055 山崎大地さん

株式会社ASTRAX 代表取締役社長 民間宇宙飛行士

2017/02/15 (水) vol.052 小城武彦さん

株式会社日本人材機構 代表取締役社長

⇑ PAGE TOP